まにあってよかった

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2014.08.27 Wednesday ... - / -
#月の跡
「朝」という字の月の彎曲に
僕は腰掛けている
朝になれば月は消えて
その先のことはわからない

味ノ無イ、がむヲ噛ンデルヨーナ、人生ナノ
ランドセルをしょった姪っ子が口を尖らす
学習院型の赤い筐体の奥には
僕の苦い忘れ物が入っている

「森」という字を書き集め
樹海という寝床を作る
枕の無い 真っ暗な夜が来る
遠くのキッチンで鍋蓋が割れる

コンセントまであと五センチ
そんな時 誰だって延長コードを夢見る
人よりも明るい 電気が恋しい
土砂降りの午後 ヤマダ電機へ走る

「髪」という字は窮屈なので
バッサリと切ってやった
床に落ちた僕の髪は
「髪」という字に似ていた

 
2014.01.04 Saturday ... comments(0) / -
#かまきり


かまきり が袖を引く
貧弱な鎌をカフスに突き立て
出勤する私を引き留める
そんな鎌じゃ 草も刈れまい
まして人間なんて 狩るもんじゃあ ないよ
生地がいたむから 
その鎌 どけておくれ

かまきりを振り払って
それっきり かまきりのことなんか
忘れてしまった 
かまきりは 私の鞄にしがみついて
改札を通過していた
黒い鞄に 緑のかまきり
色合いが瞳に涼しいので
携帯で撮影して送信する
「!件名を入力してください。」
件名「かまきり」



駅のホームで 白い錠剤を飲む
二錠 毎朝欠かさず飲んでいる 
毎日のことなので 何に効く薬なのか忘れた
かまきりに一錠飲ませようと思ったが
かまきりの頭より錠剤のほうがよほど大きい
こんな大きな錠剤を飲んでいたのかと
急に頭が痛くなってきたので
いそいでもう一錠飲んだ


昼休み
かまきりがキーボードの上に這い出してきた
かまきりの体重では キーは少しも沈まない
自慢の鎌をもってしても 
kamakiri のkも打てない
これじゃ OLはできそうもない
かまきりに向いている職業はなんだろう
昼休みのあいだずっと
かまきりの就職について考えてみた
「無職」では世間体が悪い
「害虫駆除」の看板が出せるほどは虫を喰えない
しかし社会は 書類の空欄をいちばん嫌うのだ

職業「かまきり」


それ、カマキリ、ですよね
事務の若山さんが 
かまきりを指さして言う
ゆび の先端には銀色の尖ったネイルチップがギラリと光る
そう、かまきりですね。僕のじゃないですけど。
さて 若山さんの指と かまきりの鎌は
どっちが強いのだろう
若山さんの爪は取り替え可能だから
長期戦ではカマキリの分が悪い
カマキリに勝機があるとすれば
最初の一撃で若山さんの爪を剥ぎ
彼女の戦意を喪失させることだ
あとは若山さんを羽交い絞めにして
頭から貪り食う


キモチ悪いから、捨てません?
若山さんが かまきりを指さして言う
俺が捨ててやるよ、と
田村課長が 得意そうに かまきりをひょいと摘む
カマキリって、飛べるんだっけ? と言いながら
田村課長は窓を開け 
かまきりを ポイと放り投げる

地上42階の窓から 新宿の空に向かって






2012.09.16 Sunday ... comments(0) / -
#犬に尋ねる 2


犬小屋から顔を出した僕は
首輪を探している
首になにか巻いてないと
不安になるのだろう
優しい飼主は三日前に
首輪を燃えないゴミに出していた
私は今日から自由になる
お前も自由になるといい
今までこんな汚い小屋に閉じ込めて
本当に済まなかったな
そういって飼主は
僕から首輪を外した
飼主は自由になった
僕も自由になった
飼主はいなくなった
僕はいなくならない
犬小屋の入口と出口を
僕はいまも見張っている






 

2011.02.07 Monday ... - / -
#犬に尋ねる

白紙の中の犬が
火をおこして
紙を燃やす
何も無くなった背景に
犬小屋が残る
犬小屋の入口と出口を
僕はずっと見張っている
このあたりはいつも
焦げ臭い












2011.02.01 Tuesday ... - / -
#冬に歌わない

歌おうと思っていた歌を
先に唄われてしまい
次の順番を待つあいだ
風邪を三回ひいてしまった

今年の冬は寒いね
空缶の飲み口に告げると
ふちに残ったコーヒーが
「もう動けない」と答える

うがいする時あのひと
なんで「アー」って言うんだろう
イソジンまみれの「アー」が
ストーブにあたりに来るよ

風邪が三回治ると
もう何も出なくなった
咳も くしゃみも 鼻水も歌も
出なくなった

マイクが回ってきたので
花瓶に挿して窓際に飾った
水を替えないでいたら
声を拾わなくなった

ホカロン(貼るタイプ)を剥がして
冬の一日は終わる
僕(酔うと寝るタイプ)はビールを飲んで
自分の鼻歌を聴いている











2011.01.20 Thursday ... - / -
#秋よ去れ

目蓋が軽くなって
開け閉めを手伝う私の
腕はひとまわり細くなった
細くなった腕は心持ち長く見え
誰にでも絡みついて採寸する
生温かい巻尺のように見えた
蓋を閉めたときに死滅する
いくつかの光の中に
私は忍び込もうとした
巻尺が告げる数字には
陰ひとつ見当たらない
光をさえぎる庇も無く
数字にはいつも隣人がいない
目蓋が軽くなるにつれて
私は楽々と衰弱する
薄く薄くスライスした
私は秋に散るという



2010.11.03 Wednesday ... comments(2) / trackbacks(0)
#いぬの未来
こうなったら生きるしかない
犬が悲壮な勢いで飼い主を引っ張っていく
鉄の鎖だったら良かったのに
あいにくのお散歩ロープで
せっかくのアスファルト環境で
飼い主がボロボロになるまで引きずっても
世界はジャラジャラも鳴らず不当に静かで
散歩はつつがなく遂行された
犬を電柱に縛り付けておけば
飼い主は何でもできる
何でもできると思うと
飼い主は死にたくなるのだ
犬は電柱にマーキングする
犬の未来のために




2010.05.25 Tuesday ... comments(0) / trackbacks(0)
#水溜まり
あなたの胸の 庭先の
水溜まりを 私にください

鏡を跨いで 苦しすぎた
季節はもう 痩せて赦され

所有した 冷たく
冴えたレンズの不在を

終日の陽射しを 事切らせ
水溜まりは私を 沈める

あなたの胸の 庭先の
水溜まりに 私がいました





2010.05.24 Monday ... comments(0) / trackbacks(0)
#ついそこに目がいってしまう

雲を憎むような話さ
かすり傷 ひとつない白い雲

タイムラグがねえ、あってさ
今まさに、憎まんとしているわけだ

この文体あをによし
習い覚えた涙を
雨にする方法

ついそこに
目がいってしまう
隠さないでおくれ
インキが黒いうちは



2010.05.15 Saturday ... comments(0) / trackbacks(0)
#風化


ビルがお砂糖のように泣き崩れると知ってから
カラスの屍骸を何羽見たことだろう
マスクで呼吸器を覆うと
人が変わったように人は

光は爪の間や毛穴に隠れて
体の中を明るく照らしている
胴体が筒であることの心細さよ
今日も重さがないので光は
覗いても 望んでも
すすり泣くことができない

見たことがないのだ


 

2010.05.15 Saturday ... comments(2) / trackbacks(0)
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