まにあってよかった

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2014.08.27 Wednesday ... - / -
#11/10

例えば電車の中で読む本として、なにが最適だと思う? と訊かれて、あなたなら何と答えるだろう。ミステリー、時代小説、コミックなど、ジャンルを答えるひともあれば、具体的な作家名を思い浮かべる人もいるだろう。いずれにしても、「電車の中で」という条件が、本の種類を微妙に左右するのではないか。わかりやすくいえば、自宅で官能小説を愛読する男が、電車の中では「論語」を読むとか。車中で会社の同僚にバッタリ、という場面を想定して、無難な本を選んでおいたほうがいいという判断は、だれの心にもあるだろう。でも実際のところ、「何読んでるの?」と気安く踏み込んだ質問をしてくる人はそれほど多くはない。「おや、偶然だな、いつもこの電車かい?」なんて言葉を交わして、本のことなど話題にしないのが、世間の自然な成り行きである。本には書店の名前の入った茶紙のカバーが掛かっていてタイトルは見えない。見えないものにわざわざ探りを入れるのも、大人げないような気がする。本の嗜好だって個人情報なのだ。
 電車の中で読むには、繰り返し読むことに耐える本がいい。ストーリーに主眼が置かれたミステリーやサスペンスでは、続きが気になって、満員電車の中で無理やりページを開いて回りの迷惑になったり、夢中になりすぎて乗り過ごしてしまうこともある。だから、内容はもうとっくに知っているけれど、繰り返し読んでも新しい発見があるような本がいい。
 ではどんな本がいいか。当然、薄い本がいい。ビジネスバッグに納まる文庫本がいい。つまり、新刊のハードカバーはアウトである。新刊ならば新書、さもなくば文庫を選ぶのが、しがないサラリーマンの性である。繰り返し読む、という点では、聖書が最適かもしれない。でも、聖書は厚い。聖書ではないが、聖書のように繰り返し読める本は何か? キルケゴール「死に至る病」が思い浮かぶ。哲学書としては無類の薄さである。タイトル的にも日本の通勤事情に相応しい。しかし、一日の始まりの朝にには、あまりふさわしいとはいえない。次に吉増剛造詩集が思い浮かぶ。薄さは問題ない。繰り返し読んでも、常に新しい。しかし、読むと会社に行きたくなくなる。次に島尾敏雄「死の棘」が思い浮かぶ。もっとも聖書に近い小説はこれではないかと思う。しかし文庫本でも厚さが気になる。やはり会社に行きたくなくなる。

 
 





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