まにあってよかった

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2020.05.24 Sunday ... - / -
#方法

 
食べてすぐに寝たので

牛になってしまった

モゥ、春なんですね

牛ですから

乳でも出しましょうか

あれ、お肉が目当てですか

つまり、体目当てで

私に近づいたのですね

甘い言葉で誘って

私をまんまと牛にして

体を頂こうというわけ

包丁なんか持ち出して

春から物騒なことで

警察を呼んでもいいけれど

寝てすぐに食べれば

もとの姿に戻るそうですから

モゥ、あなたを食べるしか

方法がありません




2010.02.22 Monday ... comments(2) / trackbacks(0)
#ハ ル

 

梅のなかにハルは隠れていた

男たちの少女期のように

前髪をあげる時機を逸して

笑顔をもらえなかったハル


桜が咲いて散るのは

冬の粗相だというのに

ハルはかたくうつむいたまま

冬の代わりに罰を受ける


暖かい梅の幹を追われ

毛虫のように叩き落とされ

この世の冷たい草むらで

ほっそりと生きはじめるハル


背中を丸めた小さなハルは

ながいながい余生をさかのぼる

この世は巨大な獣のようで

波うつ広い平野をもっていた


なめらかな毛並みに逆らって

獣の背中を越えていくハル

獣はあたたかい土地から土地へ

盲目に走りだしてしまうから


ハルの頭のうえをひゅんひゅん

飛び去って行くたくさんのハル

ハルはハルをなんにちも

見送って飽きなかった


見あげるハルと見おろすハル

見あげてもハナはなく

見おろしてもハナはなく

見えるのは桃色のハルの影ばかり


胸のなかにハルを隠していた

膨らむことのない硬い胸に

ハルがあふれてもあふれても

ハルはハルになんにも

教えることができない

 

 

2010.02.22 Monday ... comments(0) / trackbacks(0)
#自作を読み返すのは嫌だ
 
一応、書いてしまった詩は、こちらにも載せておこうと思うのだけれど、自分の書いた詩を読みかえすことほど嫌なことはなく、散文ではそんな気持ちにはならないのに、詩ではなぜそうなのか、不思議だ。日記は読み返すことに意義があると思うが、詩を読み返すのは苦痛なので、そもそも、ブログに詩と日記が同居するというのが、間違っているのかもしれない。
2010.02.09 Tuesday ... comments(4) / trackbacks(0)
#net詩
 

みずから編んだ網の
美しい放射を 
蜘蛛は知らない
だから ため息をつかない 
網をたたむ 
空腹の夜さえも

ストッキングに爪をかけて
破りたい、欲望の夜 
彼は ヒョーゲンする
破れ目から顔を出す
絶世の自我像を
破れ目から手を振る
薄化粧の父親を

となりでは
鳥目の彼女がいそいそと
メタファーをずり下ろす
足首で丸まったストッキングは
金糸雀の巣のように暖かい

劣文を敷いた冷たいベッドでも
性交はできるんだ
痛んだバネがギシギシ鳴るから
甘い睦言にも切実さが、

ねえ、できちゃったの。
なにが?
詩が。

もしもし、おふくろ、
何日身籠れば 産んでもいいんだ?
なにを?
なんだろう。


鳥目の彼女には羽がない
おだてても 懇願しても
飛んでいってくれない
これが モモ肉
これが ムネ肉
これが ササミ
全部に名前が付いてるの
豊満な鳥肌を惜しげもなく差し出して
ああ、君を食べ尽くすことなんて
僕にはできないよ


未熟児を産湯からあげて
原稿用紙にくるむ
赤ん坊から立つ湯気の香りは
うまく表現できないけれど良いものだ
やはり 
原稿用紙は満寿屋に限る
ところで
この子の名前、どうする?
「無題」はどうかな?
あ、いいんじゃない、字画もいいし。


何日も 何日も
獲物が掛からないことがある
網を張る場所が悪いのか
網の出来が悪いのか
蜘蛛に そういう悩みはない
腹が減れば 網を食ってしまう
網は また張ればいい
糸なら、
糸ならたくさん
あるのだから
この腹の中に


2010.02.09 Tuesday ... comments(0) / trackbacks(0)
#キネマコンプレックス
 電気由来の感傷を
どこまでも深く植えて

眼底で映画がはねる
フィルムを硝子体に仕舞う

ねぇ、あなた
エンドロールで拍手する癖
どうにかならないかしら

映画は見世物なんだから
拍手して いいんだよ

映画は偽物なんだから
拍手なんて しなくていいの

似せ者の女に恋する男の
終わらない眩暈をめぐる
映画を観ていた

なんかね、恥ずかしいの
いまどき誰も拍手なんて
しやしないのに

キャメラの定まらない視線が
抜き差しならない光ばかり
拾っては 患っている

ねぇ、帰りましょうよ
すっかり明るくなっちゃった

男は似せ者を追いかけて不意に
本物の女に出会ってしまう

ねぇ、帰りましょうよ
誰もいなくなっちゃった

偽物を追いつめると本物になる
そこで恋が終わり 女は死ぬ
上映が終わり 映画が生まれる

人にぐるぐる巻きついて
驚かす妖怪なんだって

誰が?
一反木綿が。

それは苦しそう

でも今は 不景気だから
映画館のスクリーンになりすまして
日銭を稼いでいるんだ

それも苦しそう

暗い空からふんわり舞い降りて
白い布が覆いかぶさってくる

こうやって
ぐるぐる君に巻きついて

ほら、
もう何も見えない




2010.02.09 Tuesday ... comments(0) / trackbacks(0)
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