まにあってよかった

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2014.08.27 Wednesday ... - / -
#悪いカニ
 
 批評家Xは、カニパンが大好きで、カニパンを切り込みに沿って分解しては再構築して、さらに分解して味わうことで、何とか正気と健康を保っている奇特な男である。カニパンを製造しているのは静岡にある製菓会社であるが、その会社の工場では、夏休みなると近所の高校生が、ベルトコンベアを流れてくるカニパンを検品してバイト代を稼いでいるそうで、批評家Xは、そんな夢のような仕事に若いうちから従事できる高校生が死ぬほど羨ましいと思うのだ。何が羨ましいといって、高校生の頭脳の中には、「良いカニと悪いカニ」という明確な区別があり、そんな常人ではちょっと想像しがたい感覚を若年のうちに体験できることが、まずもって羨ましいし、検品ではじかれた悪いカニが、ダンボール箱の中にウジャウジャしている素敵な光景を見ることができるなんて、ほとんどめまいがするくらい羨ましいのだ。寝物語にそんな話をすると、批評家Xの愛人は、「悪いカニも横に歩くの?」なんて、この女にしては珍しく気の利いた質問をしてくるので、「勿論、横に歩くさ、悪い男が横に歩くようにね」なんて返事をし、「あら、それって貴方の事?」なんて女に言わせるのも、まんざら嫌いではないと思うのだ。だが女は必ず、「でも、カニじゃなくて、パンなんでしょう?」と現実を突きつけてさっさと寝てしまい、批評家Xは眠れないまま、カニの形をしたパンなのか、パンの形をしたカニなのか、という難問を考えながら、「悪い男は横に歩く」という小説でも書こうかと、思い始めるのだ。
2006.12.13 Wednesday ... comments(0) / trackbacks(0)
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